赤や青、金色…カラフルでキッチュな箱から流れるお経や念仏ソング。
サイケな見た目のこの機械は、「ブッダマシーン」と呼ばれるれっきとした宗教グッズだ。
ド派手に光るものや絵柄が回転するもの、首から下げられるものなど、デザインはさまざま。また収録曲の曲目や曲数、アレンジは多岐にわたる。
ポップで楽しい「ブッダマシーン」を世界中から集めて販売するのが「光と音の専門店ハオハオハオ」さんだ。
平日は会社員として働くかたわら、ネットショップやイベント出展でブッダマシーンを販売している。
ー そもそも「ブッダマシーン」って何でしょう?
光と音の専門店ハオハオハオ(以下、ハオハオハオ):「ブッダマシーン」という名前自体は、2005年に中国の「FM3(エフエムスリー)」という現代音楽ユニットが発売した商品が元になっています。
タワーレコードやヴィレッジヴァンガードなどのメジャーな場所でも売られたり、音楽雑誌にも取り上げられていました。
▲FM3によるブッダマシーン
ー 念仏が入っているんですか?
ハオハオハオ:いえ、これにはインストゥルメンタルの癒し音楽が入っています。
この「ブッダマシーン」の元ネタになったのが、念仏が流れる機械なんです。中国では「電子念仏機」と呼ばれてます。
ー 電子念仏機……新しいんだか古いんだか分からない名称ですね。
▲念仏が40曲入ったブッダマシーン(電子念仏機)。右上の液晶に曲順が表示される。
▲裏側には曲目が直接印字されている。
ー ブッダマシーン(電子念仏機)の原産国はどこなんですか?
ハオハオハオ:全部中国です。
ー 現地ではどういう使い方をしてるんでしょう。
ハオハオハオ:お寺や敬虔な仏教徒の方が常に念仏を流すために使用したり、お店をやっている方が商売繁盛で神棚に置いてるケースが多いです。
ー 見た目はポップでかわいいですが、真面目に使われてるんですね。
ハオハオハオ:私みたいに見た目がかわいいとか面白いっていう理由で買う人は、現地の方からすると謎らしいです(笑)
ー 買い付けは中国に行くんですか?
ハオハオハオ:はい、メインは義烏(イーウー)という世界最大の卸売市場です。
ただ、そこに行けばブッダマシーンがあるのがわかってて面白くないので、最近は世界中の中華街を巡って探すのが楽しいですね。
もともとお寺も仏像も好きなんですけど、海外のお寺に行くと「ブッダマシーン置いてないかな」っていう目で見ちゃいます。
― ハオハオハオさんで買うお客さんは、どういう方が多いんでしょうか
ハオハオハオ:DJをしていたり、純粋に音楽として使う方が結構いらっしゃいますね。あとはJK(女子高生)。
― JK!?
ハオハオハオ:かわいい女の子が誕生日プレゼントにと、自分の分と友だちの分を合わせて買って行ってくれたこともありました。逆に、仏教の熱心な信者の方が買うことは全然ないです。
ー 販売しているもの以外に、ご自身のコレクションは何個くらいあるんですか?
ハオハオハオ:本格的に集め始めたのは3年前くらいで、数は100個くらいです。
ー 100個も!
ハオハオハオ:ブッダマシーンはそもそも種類が少ないので、そんなに集められないんですよね。
▲インタビュー当日も、コレクションの中からたくさんブッダマシーンをお持ちいただいた。
ー 今わかっているだけで何種類くらいあるんですか?
ハオハオハオ:色違い、柄違い、収録曲違いを含めると、200種類くらいはありそうです。
ー 他の音楽のジャンルで、こんなに機械とコンテンツが一体化したものって見ないですよね。それが独自で面白いです。
ハオハオハオ:今の時代と逆行してるのがいいですよね。ストリーミングがメインでデバイスやCDが売れなくなっている時代に、曲が入った箱を売っているのが魅力です。
ー 特にお気に入りの名盤はあるんですか?
ハオハオハオ:ありますよ!去年から流通しはじめたモデルで、リモコン付きの充電式で288曲入っています。
ブッダマシーンってたくさん念仏が入ってるんですが、アレンジ違いで同じものも多いんです。「あ、あの曲だ」「あ、これイントロ短いな」と気づくことがよくあります。
このマシーンも他のと同じ曲が入っているんですが、めちゃめちゃ現代版アレンジされてて、かっこいいんです!
▲イントロのアレンジに心を掴まれる、ハオハオハオさん一押しのブッダマシーン
― (念仏ソングを聴いて)たしかにかっこいい!電飾も凝ってますね。
ハオハオハオ:圧倒的にクオリティが高いですよね。
大悲咒(だいひしゅう。大悲心陀羅尼とも呼ばれる、般若心経と同じくらいメジャーなお経)にメロディをつけたものなんですが、イントロが凝ってるし、伴奏も豪華ですし、一線を画す名曲ですね。
ー 部屋でずっと流したいくらい心地よいです。一曲目でかなり心掴まれますね。これまで出会った中で、特に思い入れのあるブッダマシーンはありますか?
ハオハオハオ:6年前くらい前に、インドネシアの中華街で初めて見つけたブッダマシーンです。ジャカルタの中華街の仏具店をひたすら一軒ずつまわって聞き続けて、やっと出会ったのがこれです。
ブッダマシーンの存在を知ってからずっと、自分の足で探して見つけたいと思っていて。通販サイトは見つかるんですけど、店頭にはなかなか置かれてなかったんですよ。
▲インドネシアで初めて出会ったブッダマシーン第一号
ハオハオハオ:実は今週末にブッダマシーンのメーカーとアポを取っていて、中国に行くんですよ!工場の製造現場を見せてほしいと言っています。
ー おおーすごい、本丸に乗りこむんだ!ブッダマシーンだけを製造しているメーカーなんですか?
ハオハオハオ:はい、会社名に「念仏機」が入っているので、専門の会社だと思います。
ー ブッダマシーン一本でやっていけるってことは、それだけ市場があるってことですね。
ハオハオハオ:すごいことですよね。
ー ハオハオハオさんは世界中を旅してるんですよね。
ハオハオハオ:はい、これまで37カ国訪れました。
もともと旅行好きだったんですけど、ただ海外行くだけだと面白くないなと思いはじめて、ブッダマシーン集めをテーマに旅するようになりました。
世界中の中華街を巡って、ブッダマシーンを探してるんですけど、みんなブッタマシーンはそんなに買わないので、貴重なデッドストックが残っていたりします。
ー いままで見たことないものを発見したら、ありったけ買うんですか?
ハオハオハオ:はい、ありったけ買ってきます!自分で持ち帰るなら多くて50個くらいですが、買い付け目的の場合は100〜200個買って船便で送っています。
ー そんなに!
ハオハオハオ:半分くらい壊れてるんですよ。輸送中に壊れることもあれば、最初から壊れてるものもあって。量が少なければ確認してから買うんですが、買い付けの時は大量にあるので受け取ったものをそのまま送るしかないんです。
ー お店をはじめたきっかけは?
ハオハオハオ:三年前、仕事をやめて無職だった時期がありました。半年は貯金でなんとか生きていけそうだったので、海外旅行しようと思って。せっかく行くなら何か買い付けたいなと。
「そういえば、私ブッダマシーン好きだな。ブッダマシーン屋さんって世の中にないよな」と気づいて、ブッダマシーン屋さんをやろうと決めました。
ー 海外ではブッダマシーンがありそうなところばかりを巡るんですか?
ハオハオハオ:ほとんどそうです。重い荷物を持ちながらストイックに探しまわっていると、だんだん苦痛になってくるので……。最終日はご褒美で美味しいものを食べたり、観光地を訪れたり、旅の成功を感謝してお寺にお参りしています。
友達と行くときも前乗りして、一人で買い付けしてから合流します。
ー マジでストイックだ……
ー 今後やってみたい活動はありますか?
ハオハオハオ:アーティストの人とコラボしたり、ブッダマシーンを使って何かやることに興味があります。あとは、もっと他の宗教グッズを探せたらいいなと思ってますね。
ー 他の宗教グッズ?
ハオハオハオ:例えば「バイブルマシーン」っていう、賛美歌が入っている機械があります。
▲色がド派手なバイブルマシーン(光と音の専門店ハオハオハオHPより)
ー バイブルマシーン!原産国はやっぱり中国なんですか?
ハオハオハオ:中国です。アメリカでは通販番組で売られてるくらいメジャーなんですよ。中国語版もあって、中国語で聖書を読み上げたりする機械です。
ー 各地の宗教マシーンって面白いですね。
ハオハオハオ:イスラム教だと「コーランマシーン」があります。今月末はコーランマシーンを探しに、トルコに行ってきます。イスラム圏はモスクの近くに宗教グッズのお店があるので、そういうところを探してみます。
ー バイブルマシーン、コーランマシーンの他に、あたりが付いている宗教マシーンはあるんですか?
ハオハオハオ:ヒンズーマシーンもあります。
ー 巡らなきゃいけない場所が増えますね!
ハオハオハオ:仏教は日本人にも親しみがあるんですが、他の宗教は自分も知識がないので。もっと色々勉強しなきゃですね。
ー 意味がわかると、また楽しさが増しますね。
光と音の専門店 HAOHAOHAO
ホームページ https://hao333.theshop.jp/
Twitter https://twitter.com/haohaotokyo
Instagram https://www.instagram.com/haohaotokyo23/
聞き手:松澤茂信(東京別視点ガイド)、村田あやこ(路上園芸学会)
執筆:村田あやこ